キミと初恋。
「じゃあ、泣いてもいいぞ」


冷たい雨が、急に止まった。


パラパラと弾む音と共に、背後からかけられた言葉。

背後から私に傘を差してくれている相手が誰かなんて、振り返らなくてもわかる。


「……先輩、なんで先に帰ってないんですか?」


ヒーローですか、先輩は。

弱ってるところにサッと現れる正義の味方ですか。


「かすみが呼んでる気がして?」

「疑問形で言わないで下さいよ。そもそもそれ、間違ってますので。私先輩なんて呼んでませんのでお帰り下さい」

「相変わらずドライだなー」


そう言って、小さく傘の先が揺れる。声の調子からして、きっとこれは先輩が笑ってるからなんだと思う。


こんな状況でも先輩はいつも通りの口調でいつも通り接してくる。

これはきっと、先輩なりの気遣いなんだと思う。だからこの態度に対して一切の不快感はなく、むしろどんな表情でこちらを見てるのかが気になった。


< 97 / 204 >

この作品をシェア

pagetop