キミと初恋。
例えば、マンガとかでありそうなシーンで、私の代わりに先輩が怒りを露わにしたり、その感情を表す一つとして大声で叫んだり……なんて事でもされていたら、きっと私の感情は一旦横に置くことになって、どこか消化不良な気分になっていたと思う。

それは私の存在をどこかおざなりにされたような感覚で、先輩に対してガッカリした気持ちになっていたかもしれない。


もしくは、ドラマとかでありそうなワンシーン。先輩が背後からやって来た時に、もし抱きしめられたりでもしていたら私は本当に、泣いてしまっていたかもしれない。


でも先輩はそうはしなかった。いつも通りだった。

それでいいし、それがいい。


先輩は正義の味方でヒーローなのかもしれない。

けど、私はヒロインなんかじゃない。先輩のヒロインは私なんかじゃない。

もし私がヒロインだったなら、今頃ドラマが生まれていたかもしれない。

だけどドラマは生まれないし、先輩のヒロインは他にいる。

ヒーローの隣はヒロインのもので、ヒーローが抱きしめていい相手はヒロインだけでなくちゃいけないんだ。


だから、私はこれでいい。


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