隣の席の三島くんには彼女がいたんだってさ。
わけが分からない感情が、ふつふつと沸き起こってきて、気付いた時には私と三島くんを挟む机に、勢いよく手をつき立ち上がっていた。


三島くんが驚いたように私を見上げている。


「バッカじゃないの!!三島くんのくせにっ!!三島くんなんて、地味で大してかっこよくもないくせにっ!!」


何言ってるの私。


「ずっと前に別れたくせに、未だに想ってるとか!…指輪、ずっとしてるとか!私が元カノだったら普通に怖いって思うから!何まだつけてんだよって思うから!」


何でこんなにヒドイこと言ってるんだ私。


「片想いとか、無駄な時間じゃん!止めなよそんなの!!一生その人を想ってるつもり?そんなのバカバカしいよ!!前に進みなよ!!」


「……何で、北川さんにそんなこと言われなきゃならないわけ?」


いつも穏やかな三島くんの、低い声にぞっとする。


「俺達のこと何にも知らない北川さんに、とやかく言われたくない」


「これ、俺が書いて出しとくから」そう言って日誌をパタンと閉じる三島くんは私の目を見ない。


怒ってる。


そりゃ、怒るよね。


だけど…––––。


「関係あるよっ!!!」


そう叫ぶ私の頬には、熱い涙が伝っていた。
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