隣の席の三島くんには彼女がいたんだってさ。
「私だって、ずっと前から三島くんに片想いしてるんだから!!」
「……北川さん……?」
「自分ばっか辛いと思うなっ!!三島くんのバカッッ!!!!」
教室を走り去る私を、当然ながら三島くんは追いかけてきてはくれなかった。
***
私が三島くんを好きになった時には、もう彼の左手薬指に指輪があった。
だけど。
だからといって、消せる想いじゃなかった。
たとえ、振り向いてもらえなくたって、叶わなくたって。
消せない想いは片想いとなって、心の奥深くに根を張り小さな花を咲かせるんだ。
だから、分かってるよ。三島くんの気持ち。
痛いほど分かるよ。
だからこそ、苦しいんだよ。
前に進めない三島くんを見てると辛いんだよ。
いっそ元カノのことなんか綺麗さっぱり忘れて、誰かにまた恋に落ちてよ。
私が諦めつくくらい、幸せになってよ。
***
こんなにも、三島くんの隣の席だったことを嫌だと思ったことはない。
昨日の私は、散々彼を罵倒したあげく、告白したも同然なセリフを吐いて逃げ去ってしまった。
そのせいか、今朝からずっと右隣から尋常じゃない視線を感じる。
気のせいかとも思った。
だけど、そうではなかったようで。