隣の席の三島くんには彼女がいたんだってさ。
私は、こんなに弱々しい三島くんを初めて見たんだ。


三島くんは、なぜ私に元カノさんの話をしてくれたんだろう?


なぜ、こんな姿を見せてくれたんだろう?


そんなの分からない。


だけど、三島くんが前に進みたいと思っているのだけは分かる。


進もうともがいてる。


だけど、三島くんの心はまだ元カノさんに囚われているんだ。



私の背中に回る三島くんの手が熱い。


その手にはやっぱり、あのシルバーの指輪が光ってるんだ。



勝てっこない。


死んでしまっているんじゃ、勝負すら挑めない。


私は、一生彼に片想いをすることになるのかもしれない。


そんなの…苦しい。


だけど–––––。



三島くんが、ゆっくりと顔を上げる。


その瞳は、寂しさと悲しさを秘めた瞳だ。


三島くんは、ワイシャツの第一ボタンを外す。


シュッという音を立てて、ネクタイを緩める。


「北川さん、慰めてよ。俺の手を引っ張って、前に進めって言って…」


––––だけど、私の心だって彼に囚われてしまっているんだ。


三島くんの頬を光るものが伝う。


私を利用していいよ。


三島くんが苦しいのなら、私も一緒に苦しくなってあげる。


三島くんが動けないのなら、その手を引いてあげる。
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