隣の席の三島くんには彼女がいたんだってさ。

三島くんは、伏せていた目を私に向けると、またあの寂しげな笑みを浮かべて。


「俺の元カノね。死んじゃったんだ」


驚くべきことを口にした。



「……え？」



死んじゃった？


死んじゃったって……。


三島くんは元カノさんと別れたんじゃなく、死別しちゃったってこと……？


ドクッと心臓が嫌な音を立てる。


「ずっと、子供の頃から好きだったんだ。幼なじみだったんだけどね。一緒にいるのが当たり前で、彼女を好きな気持ちは俺の一部になってたんだ。彼女も俺と同じ気持ちだって知った時は飛び上がるほど嬉しくて、ずっと…ずっと彼女と一緒にいるんだって、そう思ってた」


「だけど」と言って、三島くんの表情が苦しいものに変わる。


「…だけど、事故でね。本当、突然の事だった。ちっとも信じられなくて、何度も夢だと思ったけど、違かった」


「三島くん…」


「北川さん。片想いってさ？相手への一方的な想いだけを言うんじゃないんだよ。もう、二度と届くことのない、行く先のない想いも、片想いって言うんだ」


「……っ！」


気付けば、私は三島くんの項垂れる頭を支えるようにして抱きしめていた。


「ごめんねっ！ごめんね三島くん…っ！前に進めだなんて言って…ごめんねっ…」


「…北川さん。俺、前に進みたいよ…」