恋に涙を花にはキスを【コミカライズ連載中】

それから二週間は、仕事を覚えるのに必死だった。
必死っていうとなんだか物凄く大変だったように聞こえるが、そうでもない。


職場は最初の印象通り人間関係はとても良くて、みんな優しく教えてくれるしなんでも聞きやすい。
まあ、ちょっと営業の男の人たちが、仕事の合間にちょこちょこと下心満載の顔でコミュニケーションを取ろうとしてくるのが面倒といえば面倒だけど、そういうのを適当に受け流すのは慣れている。


京介くんとは、あれから何度か連絡は取ったけど会えず仕舞いだった。
それどころか、彼からの連絡が減ったような気がする。


あの夜、やっぱり傷つけてしまったのかなと思うと、一度ちゃんと会って話さないとと思うけれど……あの話を蒸し返す勇気もない。
だけど、このままだと私はまた愛想をつかされるのだろうか。


考えると苦しくなって、それでつい、必死になって仕事に集中するというわけだ。



「一花、今日の業者会の報告書、後で作り方教えるから先に一通り文書で起こしといて」

「わかりましたけど……東屋さん、最近私のことメモ代わりに使ってません?」

「一花が居ると便利でいいな。話に集中できる」

「構いませんけど、私ずっと東屋さんと一緒に仕事するわけじゃないですからね。変なクセになると後でめんどくさいの東屋さんですよ」

「お前……いちいち生意気だなほんとに」



つい可愛げない口調で物をいう私に、東屋さんの頬が引き攣った。


視覚情報は逐一メモに、耳から聞いた情報は一度聞いたら忘れない私の便利な活用法を、東屋さんは見つけてしまったようだ。


まあ、研修期間はあと半月。
彼に着いて回るのはそれまでなので、その後はご自分でメモ取るなりボイスレコーダーに頼るなり、元に戻るだけなのだろうけど。

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