恋に涙を花にはキスを【コミカライズ連載中】
仕事中は、東屋さんは至って普通、いつもどおりだった。
やたら急ぎのものだとか、ぽんぽん私に投げてくる。
「一花、見積書の作成と製品一覧二十部明日までな」
「ちょっ? なんでそんな急な」
「先方が早く打ち合わせしたいって言うんだから仕方ないだろ。あとイメージ画像まとめて俺んとこ送っといて」
「私の手は二本しかありませんー!」
「二本もあってできないの?」
「できますよ!」
くそう!
っていつもこのパターンで引き受けさせられる。
だけど、ちょっと前まで避けられていたことを思えば、悔しいけれど張り切ってしまう私、単純。
それに、無茶を言って残業になった日も、彼は必ず待っていてくれるわけで。
「終わった?」
「もうちょい、です。急かすならもう少し余裕作って仕事持ってきてくださいよ!」
私の隣まで椅子を寄せ背もたれを前にして座って、ぎしぎし軋ませながら私の手元を覗き込む。
「一花、なんだかんだ言ってやってくれるからつい」
「つい?」
「楽しくて」
「楽しくて! 私は楽しくないですって。……はい、今データ送信完了しました」
楽しんでお仕事されてるようで良かったですけどね。
私だって、こんな風に弄られてほんとに心の底から嫌なわけもなく。
「じゃ、飯食いにいこう」
仕事の顔からプライベートの、少し甘さを含んだ表情になり、頭を撫でた手が私の横髪を絡めとり、耳にかけた。
こんなご褒美的な時間が待ってるなら、少しも苦に感じるわけはない。