恋に涙を花にはキスを【コミカライズ連載中】
「じゃあ、一花さん。後で都合の良い日教えてね」
「はい」
ひらひらと手を振ってミーティングルームを出て行く彼女に、私も手を振る。
なんていうか、女女してないのに妙に女っぽい人だ。
ああいうのを大人の女っていうんだろうか。
ちら、と東屋さんに視線を戻すと、まだ彼女が出て行ったドアを向いて微笑ましい横顔のままだった。
ぶふ、とうっかり笑いかけて慌てて飲み込む。
「何?」
「いえ。大人の女性って感じですねえ、西原さん」
私に視線を戻すと、すっと元通りの仕事の顔に戻った東屋さんだが。
「そう? 結構子供みたいなとこあるし面白い人だよ」
「そうなんですか?」
「一花さんに比べると、確かに大人の女性だけどね」
彼女の話になるとほんのちょっとだけ唇に微笑みの名残を見せ、そんな色っぽい表情で私はディスられた。
それが少しも嫌な気がしないのは、私はきっと彼のあの横顔が好きだからだろう。
なんだかすごく、綺麗なものを見ている気持ちになる。
長い足を組み、業者会で入手してきた他社のパンフレットを取り、大きな手がページを捲る。
少し伏せた目が物憂げに見えるけど、仕事に関しては冷静沈着。
結構、何事にも動じない感じは、その年齢にしてはとても頼もしいんじゃないだろうか。
みっつ年上だと言っていた。
三年後、私がこんな風になれているだろうかと考えれば、はっきり言って自信ない。
こんな人が、あの人の前だけで見せる表情はすごく穏やかで温かくて、こんな風に誰かに好きになってもらえたら、きっと幸せだろうなと。
私は、そんな風に思い込んでいた。
西原さんのことも東屋さんのことも殆ど知らないにも関わらず、表面上に見えることだけで勝手に決めつけて理想の恋だなあ、なんて。
思い込んでいた。