恋に涙を花にはキスを【コミカライズ連載中】

飲み会の日は、藤堂部長と西原さんの結婚式の前々日、金曜日だ。
東屋さんが迎えに来てくれるなら、もしかしたらそのままお泊りで、日曜の結婚式も一緒に行けるかな。


だったらあらかじめ式用のドレスも東屋さんとこに運んでおいた方がいいかなあ……って、勝手に都合の良いように計画たてちゃだめだけど、東屋さんだって休日全部が空いてるってわけじゃないんだし。


とか先走る脳内を叱咤しつつも、すっかりお花畑である。
給湯室を出てデスクに戻り、朝礼が始まるまでの間に、スマホを取り出し東屋さんにお店のURLを送信しておく。


飲み会も楽しみだけど、結婚式が何より楽しみだった。
西原さんに久しぶりに会えるし、何よりウェディングドレス姿も見たい。


……東屋さんも、楽しみにしてるのかな。


ふっと、お花畑の脳内のずっと奥の方で、そんな考えが微かに浮かぶ。

ウェディングドレス姿の西原さんに話しかけるだろう東屋さんを、私はきっと隣で見上げる。
浮かんだ横顔は、綻ぶようなあの横顔で。


ちり、と胸の焼けつくような感情を覚えたその時、スマホが振動して着信を伝えてくれた、そのおかげで嫌な感情は掻き消えた。


『飲みすぎるなよ』


簡潔過ぎる一言のメッセージは、それでも私を心配するものでほっこりと心が和らぐ。
フロアの離れた場所にある東屋さんのデスクに目を向ければ、彼は素知らぬ顔で隣の糸ちゃんと話をしていた。


こんなにも、大事にしてくれて、これ以上ないくらいに優しい。
なのに、不安になったりするのはおかしい。


だからさっきのはきっと、不安なんかじゃなくちょっとしたヤキモチだ。
元々好きな人だったんだもの、それくらいはあって当然だ、だから口に出すほどでもない。



深呼吸して、再びスマホの画面に目を落とす。
ふ、と口元が緩むのを引き締めてから、私は今日の仕事に取り掛かった。

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