社内公認カップルの裏事情 〜ヲタクの恋は攻略不可能?〜
嵐のように過ぎ去って行った彼女の背中を、ただぼうっと眺める。
結婚のことなんて、ここ数年は全く考えていなかった。だからこそ真樹と仮面恋人だって演じられたし、その関係が良くないものだとも思わなかった。だけど、今は私たちも正真正銘の恋人だ。いつかは私と真樹も結婚したりするのだろうか。
「河合さん!」
「あ、茅ヶ崎くん。おはよう」
名前を呼ばれて後ろを振り返ると、私に駆け寄ってくる茅ヶ崎くんの姿が目に映った。
「やっと河合さんと話せて嬉しいです!何度か話しかけようと思ったんですけど、なかなかタイミングが掴めなくて」
「本当だね。すれ違った時に挨拶とかは出来たけどなかなか話すタイミング無かったもんね」
茅ヶ崎くんとはあの飲み会以来、何度かすれ違い際にお辞儀と挨拶程度はしたけれど、こうしてしっかり話すのは初めて。
私と話せたことを何故か嬉しそうに笑っている彼に、私はふと島田さんの言っていたことを思い出した。
「あの、今イベント全力で走ってるんですけど、すごく河合さんに助けてもらってて!河合さん、いつの間にあんなにまたレベル上げたんですか」
「あ、あれね。寝る間を惜しんでレベル上げてるから、かなり寝不足。でも、力になれてるみたいで良かった」