社内公認カップルの裏事情 〜ヲタクの恋は攻略不可能？〜

「すみません、急に呼び止めちゃって」

「あ、いえ。全然大丈夫です」

首を横に振り〝大丈夫〟とは言ったものの、彼女が突然、こうして私の元にやって来たことに対しては未だ困惑していた。

だけど、普段全くと言っていいほど関わりのないはずの彼女が私に話す内容といえば、一つしかない。


「……あの、河合さんって、深川さんと付き合ってるじゃないですか？」


上目遣いのまま、恐る恐る私にそう言った彼女。

彼女の話す内容はやはり真樹のことで、女の勘とは案外侮れないのかもしれないと呑気に考える。すると。

「河合さんって、彼氏が女の子と二人で飲みに行くのとか嫌なタイプですか？」

私の返事を待つことはなく、彼女は私にそう問いかける。

殆ど間違いなく、彼女が真樹に気があるとは感じていた。だけど、この言葉を聞いた瞬間、それは確信へと変わっていった。


「つまり、藤田さんは真樹と二人で飲みに行きたいっていうことですか？」

随分と律儀で、尚且つ回りくどい。

元々、回りくどい言い回しや効率が悪い言動が嫌いだからなのか、それとも彼女への嫉妬か。ほんの少し苛立ちを感じながらも彼女に返答をする。