社内公認カップルの裏事情 〜ヲタクの恋は攻略不可能?〜
「あー、そっか。流石に今日は無理か。それなら、週末とかはどう?」
「えっと……」
真樹がいるからと言って、一瞬、断ろうと思った。いや、今までなら絶対に断っていた。
真樹とこの関係を築くことになる前は、何度か清水に誘われて二人で飲みに行っていた。清水は、優しいし仕事に対して真面目で、好意を寄せられていることを抜きにすれば本当に良い飲み相手だった。
真樹と付き合うことを公表してからは一度も誘いを受け入れなかったけれど、真樹も藤田さんと二人で飲みに行ったのに、私だけが掟を守るのも何だかバカバカしく思えてくる。だけど。
「……ごめん」
悔しいけれど、私が好きなのは紛れもなく真樹だ。他の人と二人で飲みに行く気にはとてもなれない。
普通の男友達ならまだしも、清水は私に好意を寄せてくれてるというのに。流石に二人で飲むのは抵抗がある。
「いや、謝らないで。ごめん、こっちこそ」
苦笑いを浮かべる清水が、いつもの笑顔になると「帰るか」と一言。
「うん」
自宅が同じ方向の私と清水は、隣に肩を並べると、他愛もない会話をしながら歩き出した。