社内公認カップルの裏事情 〜ヲタクの恋は攻略不可能?〜
まさか、あの茅ヶ崎くんが私のことを好いてくれていたとは思わず、私はただ目を丸くした。
「本当に、勝手なことしてごめん。美帆ちゃんと深川くんを別れさせたいわけでもなくて、ただ見てるだけの片想いなんて辛いじゃない。私もそうだから見てられなくて、つい」
「え、島田さん好きな人いるんですね」
「え? いるよ? あれ、言ってなかったっけ!私の好きな人、清水くんだよ」
「えっ⁉︎」
けろっとした表情で、まるで私が知っていて当たり前のように言った彼女の言葉は、正直、茅ヶ崎くんが私のことを好いていてくれたことよりも驚きだった。
だって、彼女は清水が私のことを好きだということを知っているはず。
「あ!待って、ひとつ勘違いして欲しくないんだけど、美帆ちゃんにどうとか思ってないからね。ただ、茅ヶ崎くんの気持ちが分かるからこそ少し頑張るチャンスをあげたくて」
「そうだったんですね」
そんな事を言われてしまっては、こっちはもう何も言えない。
確かに彼女は勝手な意図で私を飲み会に誘って、大事なことはこの通り事後報告だ。でも、片想いの気持ちは、私にだって分かる。彼女には言えないけれど、私だって付き合っていても片想いだ。
「でも、悪い子じゃなかったでしょ? 茅ヶ崎くん。それに、楽しそうにしてたじゃない」
唇に弧を描いて、にこりと笑いだす島田さんは、私が茅ヶ崎くんと結ばれても問題はないとでも言っているような口ぶりだ。
「確かに楽しかったですけど、そういうのじゃないですから」
呆れたようにそう言うと彼女は「あはは」と笑ってパソコンと向き合った。