コバルトブルーの誘惑
救急外来に駆け込むと、嶺緒はカーテンに仕切られたベッドの上で、点滴を受けていた。

「嶺緒!」と私が嶺緒の上に屈み込むと、

「舞、ごめん。大丈夫だよ。」と笑顔を見せたので、

私は安心してヘタヘタとベッドの横に膝をついてしまう。


「過労。と栄養失調だって。」とケンさんが呆れた声で言う。

「栄養失調って!?ちゃんと食べてるでしょう?」とサラさんが言うと、

「偏った食生活。後、昼と会食の時しか食べてなかったらしい。」とケンさんがため息をつく。

「全く、だからお坊ちゃんは困るわ。
家にはお手伝いさんがいたから、いつも食事が用意されてたんでしょう」

「いや、だって、暑くって食欲なくって…やる事はたくさんあるし…」と嶺緒は言い訳をしている。


「ねえ、舞、このまま嶺緒を放っておくの?
舞はお弁当を作ってくるくらい料理はできるんだから、
少し、手伝ってあげてよ。毎日じゃなくていいから…
この男は仕事しかできないのよ
また、倒れたらどうするの?」と私の顔を見る。

「舞ちゃんも嶺緒の部屋に住めば?昔、同じ家でホームステイしたんでしょ。」とケンさんも言う。

「ホームステイって…ふたりきりじゃなかったし…」と私が黙ると…

「いや、ダメだな。僕は舞に触らずにいられるわけがない。」と嶺緒も頷く、


「じゃあ、お手伝いさんを頼もう。…すぐに探さないと…」ケンさん

「やだよ。知らない人が家にいるのは嫌だ。」

「子ども!自分の管理もできないくせに文句を言うんじゃない!」とサラさんが怒る。


「皆さん、ここは病院です。静かにしてください。」と看護師さんが顔を出す。

「すみません」と口々に謝って私達は黙った。
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