コバルトブルーの誘惑
「嶺緒、日差しが強いから、帽子、買おうか?京都は盆地で蒸し暑いんだよ。」と言うと、

「一緒に買う?」と聞くので、

「い、いいけど」とブルーの瞳を見上げると、
やたらと機嫌の良いブルーの瞳にずっと見つめられていたみたいだ。

見過ぎだと思うんですけど…と瞳を逸らすと、

「やっぱり、舞のシャイは治ってないんだな。」とくすんと笑って、私の肩を抱き寄せる。

「恋人じゃない男女は肩を抱いて歩かない。」と腕を解くと、

「5年前も時間がかかった。でも、1度心を許すと、僕に寄り添っていてくれた。」

「…5年前とは違う。」

「どう違うのか教えて欲しいな。…恋人がいるの?それとも、結婚した?苗字変わってないよね。」

「…」

「僕はまだ、結婚してないよ。今は恋人もいない。…舞に会えることになって、別れてきたんだ。」

「こ、恋人と…別れたの?なんでそんな事…」

「なんでって聞くの?5年前に会ったシャイな女の子が忘れられなかったからですよ。
また、会えることになってすごく嬉しかった。…この駅で降りるんじゃない?」と普通の声で言ってから、私の手を取り、電車を降りた。

本気で言ってる?

嶺緒…
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