二人だけの秘密
美希さんに会いたい想いがますます募ると同時に、僕の心の中に眠っていた邪悪な部分も平行して激しくなる。

父親が毎日会社に持って行ってる、黒革のビジネスバック。父親はもちろん、誰もいないフローリングの床に黒革のビジネスバックが置かれていた。僕は、それに視線を落とす。

ーーーーーー父親のお金を盗めば、また美希さんと会える。

そう思うと、僕の頭の中で美希さんの全てが蘇る。

悲しそうに笑う顔。澄んだ声。真っ白な雪のような肌。

「会いたい」

その想いがピークに達したのか、

『私も、会いたい』

突然、美希さんの幻聴が聞こえた。

『父親に散々ひどいことを言われてきたんだから、お金を盗んでも何も問題ないよ』

「………」

『この家の居心地が、嫌なんでしょ。私に、会いたんでしょ。私なら、栗原さんの傷ついた心を癒してあげれる。でも、両親は傷つけるだけ』

ーーーーーー確かに、そうだ。美希さんの言ってることは、正しい。


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