二人だけの秘密
「だから、羨ましいんです。両親がいて、大事に育ててもらっている人たちが………」

美希さんの本音が、僕の胸に鋭い痛みを感じた。

「………」

それを聞いて、余計に言葉が詰まる。僕は両親から解放されたいのに、美希さんは真逆のことを思っている。

ーーーーーー美希さんーーーーーー。


僕の複雑な感情が肥大化する。

「でも、後少しなんです。お兄ちゃん今、大学4回生だから、来年の春社会人になるんです。そしたら、私もこの仕事を辞めれるんです」

ーーーーーーどうやら、そうらしい。


嬉しそうに笑う美希さんだったが、僕は素直にそれを喜べなかった。

「美希さん。もし、この仕事を辞めたとき、僕と………」

「仕事を辞めて自由になれたら、幼馴染の裕ちゃんに告白することを決めているんです。普通の女の子として………」

ーーーーーー告白する前に、僕の恋は終わった。


「未来さん、何か言いかけました?」

「別に………」

僕は、拗ねた顔をした。

「あれぇ、もしかして怒ってます?」

つんつんと頬を突く、美希さん。また、慣れ慣れしい口調。

「まぁ、ちょと………」と、僕は掠れた声で言った。



どんなに願っても、叶わない恋。彼女に会えば会うほど、僕の胸が苦しくなる。それでも彼女と一緒にいるときが幸せで、切なくて、苦しくて、僕の心が複雑に揺れる。
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