二人だけの秘密



『4月28日《月》午後9時13分』




「未来、こんな夜遅くまでどこに行ってたんや!」

キラキラと無数の星が光り輝く、煌々しい夜空。雲に隠れた欠けた月が、微かな淡い光を放っている。そんな綺麗な夜空とは正反対に、今の僕の心は暗闇だった。

「未来、訊いてんのか?」

「聞いてます」

父親に激しく詰め寄られ、僕は語尾を強めて言った。

「で、どこに行ってたんや!」

「友達の……ところに………」

僕は、消え入りそうなほど小さな声で言った。

ーーーーーーどこでもいいやろ。お前は、僕に金さえくれたらいいね。美希さん、今日はどんな日記書いてくれるんだろう。

シュンとした顔とは裏腹に、僕は美希さんのことばっかり考えていた。


「未来。やっと二週間の謹慎が解けて、学校に戻れたのに。今度は、夜遅くに帰って来るなんて。道徳心は、守って」

母親が、しくしく泣きながら言った。

「はぁ」

僕の口から、ため息が漏れた。

ーーーーーーああ、美希さんは両親がいる普通の家庭がうらやましいと言っていたが、僕はそんなこと一切思ったことがないなぁ。

美希さんが言ってた言葉を思い出しながら、僕はそんなことを思った。
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