幼なじみじゃ、なくなった夜。
悶々とした気持ちでトイレから出ると、目の前の壁に、榎波が気怠そうに背を預けて立っていた。
「!!」
ひ、と喉の奥から声が漏れそうになるのをなんとか堪える。
トイレの順番待ちでもしているのだろうか。タイミング悪すぎだよ…!
様子がおかしいのを悟られまいと、曖昧に微笑んで前を通過しようとすると
「おい」
「っ!」
低い声。
この声知ってる。
機嫌が悪いときの声だ。
「…な、何…?」
恐る恐る振り向くと、榎波が横目で私を睨んだ。
「夏帆、お前何やってんの」
「な、何…?」
「何で浜崎先輩の隣なんかに座ってんだよ」
…榎波は浜崎先輩のことが嫌いなのだろうか。
「浜崎先輩普通にいい人そうだけど…?」
「チッ」
チッ!?
返ってきたのはまさかの舌打ち。
この人、何でこんなに機嫌悪いわけ!?