幼なじみじゃ、なくなった夜。
「いい人なのは知ってるよ。女癖以外はな」
イライラしたようにそう言う榎波。
「お、女癖?」
「そうだよ。女だったらみんな大好き、誰でもいいんだよ」
「別に私、浜崎先輩と一切そういう雰囲気になってないけど…?」
普通に自己紹介して、仕事の話とかして。
たしかにノリはチャラそうだけど、今のところ普通に楽しく話しているだけだ。
「…背中」
「は?」
「擦られてただろ、背中!」
榎波が声を荒げて私に詰め寄る。
「咽るほど飲むんじゃねーよ、バカ」
…私が咽せてたのは榎波のせいなんだけど、なんて真実はとても言えない。
「…そんなに飲んでないから」
「つーか前に言ったよな、俺以外の男の前で酒飲むなって」
「だからそんなの無理だって。ていうか何でそんなこと言われないといけないの?」
「うっせーな、俺が飲むなっつったら飲むな!」
「は?何それ、横暴すぎる、バッカじゃない!?」
売り言葉に買い言葉。
言い合いはどんどんエスカレートして。
「もう!うるさいな、あんた私のお父さんなの!?」
「お前こそ反抗期の娘かよ!?」
「はぁ!?」
「…あのー…」
永遠に続きそうな言い争いを止めたのは、様子を見に来たらしい足立さんだった。