幼なじみじゃ、なくなった夜。
「あ、やべ、遅れる!」
思い出したように腕時計に視線を落とした涼平が、慌てて資料を拾い始める。
そして全部拾い終わると、少し緊張した面持ちで
「…俺、どうしても夏帆に話したいことあって。連絡先聞いても、いい?」
「えっ…」
思わず曇った私の表情に気付いたのか。
「…なんて、今更無理だよな、そんなこと!」
無理やり出したような明るい声で言った。
「じゃぁ…もしまた会えたら。そのときはまた…こうやって、話してくれる?」
「う…うん」
「ありがと!じゃぁ、またな!」
クシャッとした笑顔だけ残して、涼平が人混みの中を走り去っていく。
まさかまた会う日がくるなんて、思わなかった。