幼なじみじゃ、なくなった夜。
「……ほ、夏帆!」
「…っわ!?」
ズイ、と突如目の前に現れたカツに思わず身を引くと、カツの向こうで愛理が渋い顔をしていた。
「さっきから人のカツばっかりガン見して。何、食べたいの?」
「や、そういうわけでは…」
夏帆がカツ定食を食べていたことすら、はじめて知った。自分が山菜うどんを頼んだのは、なんとなく記憶にあるけれど。
自分の手元に視線を落とすと、すっかりのびきった山菜うどんが所在なさげにちょこんと丼におさまっている。
…どうやら随分の時間、ボーッとしてしまっていたようだ。
「また何かあったの?榎波と」
愛理が最後の1つ残ったカツをおいしそうに頬張りながら聞いてくる。
このカツ定食、なかなかボリューミーなので女性社員が食べているのは滅多に見ない。
その可憐な外見に似合わず、愛理は大酒飲みの大食いなのだ。
「…榎波とっていうか…」
そう言葉を濁した私に、
「っていうか…?」
カツを飲み込んだ愛理がキラリとその大きな瞳を光らせた。