幼なじみじゃ、なくなった夜。
「お前、俺が男ってこと忘れてんだろ」
ため息まじりに榎波が言う。
「男っていうか、榎波は榎波じゃん!」
「お前なぁ…」
「それより、榎波なんで高島先輩に彼女できたこと教えてくれなかったの!?」
榎波は高島先輩と同じ営業一課で、先輩の部下。
仲も良いから、きっと高島先輩と美咲先輩のこと、知っていたはずだ。そして私の気持ちも知っていたのに、何も言ってくれなかった。
「…だってお前、こうなんじゃん」
「こうって?」
「ショック受けんじゃん。で、どーせウジウジ泣いたりすんじゃん」
「泣かないし!」
そりゃ、少〜し、ショックは受けたりするけどさ?
「ほんとかよ。元彼のときも随分引きずってたよな」
「う、うるさいな。別にそんなに引きずってなんかないし」
「嘘つけよ」
「嘘じゃないし!
お兄さ〜ん!生おかわりくださ〜い!」
榎波のため息を聞きながら、グイッとビールを流し込む。
泣かないよ。
もう大人だもん。
だから、お酒に頼るんだ。
泣けないから、
流し込むんだ。