幼なじみじゃ、なくなった夜。





そして。




「お兄さん!ビールおかわり〜!」



「おい、もうそんくらいにしとけよ」




プチ失恋直後、ナイスなタイミングで電話してきた榎波と飲みに行くことになり、私たちは会社近くの行きつけの居酒屋で飲んだくれていた。あ、飲んだくれてたのは私だけか。



「そんな酒強くないくせに」



運ばれてきたビールを渋々私に渡しながら、榎波が言う。



「あんまり酔って、俺に襲われても知らねーからな」


「はぁ?榎波が私を襲う?そんなことあるわけないじゃん〜!」



ビール片手に榎波の肩をバンバンと叩く。



出会った時から特別仲が良かったわけではないけれど、小、中、高と、一緒の時間を積み重ねるうちに、気付いたらいつも隣にいる、特別な存在になっていた。



だけど、それは決して恋とか愛とかそんなんじゃなくて。



腐れ縁というか、幼なじみというか、戦友というか、親友というか。



とにかく、今では何でも話せて一番自分の素をさらけ出せる存在だ。




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