極甘求婚~クールな社長に愛されすぎて~
そういえばさっき、不正がどうの、という話が聞こえた。

話していた人の顔までは覚えていなかったけど、それを思い出したことで反射的にパッと隣を向く。

すると芳川さんは私の目を見つめながら早口で続けた。


「バレないようにするためのアドバイスが欲しい。大事な仲間だから助けたいんだ」


先ほどまでと打って変わった真面目な表情と声色に頭が混乱する。

でも不正の隠蔽の助言など出来ない。

首を左右に振ると急に手が掴まれた。


「芳川!」


硬直する私を見兼ねた紬が芳川さんの手を離すよう言ってくれたけど、切羽詰まっている芳川さんは私に言葉を重ねてくる。


「頼むよ。アイツだって悪気がある訳じゃないんだ。税理士ならなんらかの方法を知ってるだろ?」
「そんなの…」


知らないし、協力出来ない。

そう言おうとしたとき、掴まれていた手の部分に紬の手が触れ、勢いよく離された。


「芳川!お前がなにを相談してるのか知らないが、楓を困らせるな。楓に触れるな」
「『楓』?あ、なんだ、やっぱりそういう関係なんじゃないか。相談して損したよ。顔と体で仕事を取ってるような税理士じゃ、税務のこと聞いても答えられないからな」
「なんだとっ!?」


私の手に触れていた紬の手に一気に力が入った。
その瞬間、私も力を込める。
そうすることで間一髪、紬の怒りを沈めることが出来た。
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