極甘求婚~クールな社長に愛されすぎて~

「前回同様、不正の背景には職員から受け入れられていない税理士の存在があります」
「なんだ、それは」


紬の表情が目に見えて曇った。
その上で自身の話をするのは気が引ける。

でも私を認め、私を必要だと言ってくれた紬には話さないといけない。
意を決して言葉にする。


「今回の場合は私の存在が影響しているというのが当事務所の見解です」


そこからは所長が話してくれたことをそのまま話した。
その上で引き抜きの話を断る。


「私のせいで社内に不正が起きてしまっている以上、早急に担当を変わる必要があります。そして引き抜きの件も。申し訳ありませんが、お受けできません」


紬の仕事の邪魔にはなりたくない。

震えそうになる声をなんとか堪えて、毅然とした態度で残りの話をする。


「今後の御社の税務と不正の件は所長に任せます。すぐに決算になりますが、間違いなく引き継ぎはしておきます。そして不正の件も、証拠となる書類等全てをまとめて所長から改めて提出致します。少々バタつきますが、申し訳ありません。それと…力及ばずすみませんでした」


しっかりと頭を下げてからスッと立ち上がる。
でもその瞬間、腕が掴まれ、バランスを崩してしまった。


「わっ…」


フラつく体が紬に力強く引かれる。
そのまま身を任せていたら彼の胸に飛び込む形になってしまった。

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