極甘求婚~クールな社長に愛されすぎて~

「なに弱気になってるんだよ。役員に認めてもらうんだろ?『結果を残せなければキッパリ身を引きます』って言い切ったのはどこの誰だ?」
「それは私ですが…」


紬と話した2日後に、所長に頭を下げて決算報告までやらせて欲しいと頼み込んだときに言った。


「それなら役員たちをバカだと思っていた方がやりやすいぞ」
「いやいや、それはそれで問題ですよ」


所長なりに緊張を和らげてくれてるようだけど、きちんと準備はしてきた。


『勝算はあるのか?』


話を切り出したとき、所長にそう言われて、厳しい視線を寄越されて。
それでも負けないように、目を逸らさずしっかりと頷いた気持ちはまだちゃんとここにある。


『所長から学んだ全てを出し切ります。そして若いとか女だという理不尽な扱いを払拭し、二度と同じ過ちが起きないように存在をアピールしてきます』


漠然とした答えだったけど、所長はその私の言葉を聞いて、今回の参加を認めてくれた。
そして私が藤澤税理士事務所を卒業してもやっていけるだけの実力が備わっているか、確認すると言って付いてきてくれたのだ。

引き抜きに関して、ひと言も触れなくても、所長は私の想いに気付いたらしい。


『役員に認められないような未熟者なら引き抜きは受けるな。認められたら…彼の力になってやれ』


そう言って送り出してくれた。

そんな風に私のことを想い、気遣ってくれて、ここまで付いてきてくれた所長に自分の成長を見せたい。

もちろん、紬にも。

だから役員がどんな人たちであろうともう余計な緊張したり、動揺したりしない。

気を引き締めて会議へと挑む。
< 131 / 151 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop