極甘求婚~クールな社長に愛されすぎて~


「では勝俣先生。よろしくお願いします」


実松さんの声を受け、立ち上がり、マイクを手に取り、自己紹介から始める。


「半年程前から御社の税務を担当しています、勝俣楓と申します。本日はよろしくお願いします」


パチパチ…という疎らな拍手が起きた。
歓迎されていない感じが強い。

でもそこは気に留めず、静かになったところで仕切り直す。


「お手元にお配りした資料を元に会計報告を行います…」


とは言っても実際には決算書をただ読み上げるようなことはしない。

それなら誰にでも出来るから。

私は報告書を基に次期の業績予測、役員報酬の見直し等、数字から読み取れる最大限の情報を提供する。

ただし、これは紬の会社だからと言って特別にしている訳ではない。
これこそが所長からの教えであり、私が担当している会社はもちろん、桧山さんも同じように付随の経営計画を欠かさず報告書に添えている。

もっとも、今回に限ってはいつもより丁寧に、気持ちを込めて、自分の言葉で報告するよう心掛けた。
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