極甘求婚~クールな社長に愛されすぎて~
「反対に社を陥れるようなひとには容赦しません」
急に声色の変わった紬に、役員の顔は上がり、視線が集中した。
ただし、その中でも視線を上げられないひとがいる。
そちらに向かって紬は言った。
「理由は…『不正』と言えばお分かりですよね?」
問いかけるような言い方に、場内の視線は紬から該当者である年配のふたりへと向いた。
私も他の人同様、ふたりに目を向ける。
でもふたりの態度は対照的で、細身の白髪が目立つ男性が目をギュッと瞑り、唇を噛み締め頭を下げているのに対して、肥満体型のオールバックが特徴の男性は開き直るかのように椅子に踏ん反りかえり、私に向かって言葉を発した。
「お前が社長に在らぬことを吹き込んだんだろ?実力を見せつけるために。税理士なら出来るもんな」
「なっ…!そんなことするはずないじゃないですかっ!」
横暴な物言いに感情的に立ち上がり、声を荒げてしまった。
だってあまりにもひどいから。
怒りで体が震えるほど、血圧が一気に上がり、全身が強く脈打つほど頭にきた。
拳を握り締めることで怒りを逃してみるけど、全然収まり切らない。
見兼ねた所長が私の手に触れて「落ち着け」と小声で言ってくれなければ発狂するところだった。
「ふぅー…すみません。もう大丈夫です」
所長に礼を伝えて、もう一度深呼吸をしてからオールバックの男性の方を向き、言葉を選んで気持ちを伝える。
「私は誇りを持ってこの仕事をしています。だから不正は作り上げないし、どんな些細な問題でも見つけて報告いたします。それは私が、社長が守ったこの会社と、社長のことが好きだから。大好きなひとを地に落とすようなことは、絶対にしませんっ」
「おっ!よく言った。それでこそ俺の部下だ」
間髪入れずに所長が合いの手と拍手を入れてくれた。
そのおかげでピリッとした空気が破れ、場の空気が変わった。
ただ、オールバックの男性はまだ私を睨み続けている。