極甘求婚~クールな社長に愛されすぎて~

「一体いくらするんですか?!」


ベルボーイの方は『グランドコーナースイート』と言って案内してくれたけど、何、この無駄に広い部屋は。
リビングとベッドルームのふた部屋って、ただ泊まるだけなのに分ける必要ある?


「契約を交わすのにはピッタリだろう?」


紬はそう言うけど、宿泊費が気になって仕方ない。


ベッドルームからはパノラミックな眺望が、リビングから続いているバルコニーからは港が一望出来るとベルボーイの方は説明してくれているけど、頭に入って来ない。


「お高いんでしょう?」


金額ばかりが気になり、さり気なく聞いてみた。
でもニコリと微笑まれるだけで教えてくれる気配がない。


「仕方ない」


彼が部屋をあとにしたのを機に素早くスマートフォンを取り出し、調べる。

でも、後ろから伸びてきた手にスマートフォンが取られてしまった。


「金に細かいのはいいことだが、今日は気にするな。特別な日なんだから」
「特別な日?」


首をかしげると紬は困ったように笑った。


「自分の誕生日を忘れるひとって本当にいるんだな」
「え?あ、今日…!」


誕生日だった。
忙しかったのと、今日の会議のことで頭がいっぱいで忘れてた。

そういえば所長は婚姻届を渡してくれた時、『日取りがいい』って言ってた。


「このことだったんだ」


所長の粋な計らいにクスリと笑ってしまう。


「なに笑ってるんだ?」
「なんでもないです。それより、そういうことならこの部屋を堪能させていただきます。せっかくだから夜景見ましょう」


こんないい部屋、一生のうちに何度泊まれるか分からない。
紬の好意に甘え、彼の手を取り、ベッドルームの方へと進んで行く。


「わぁー…綺麗」


ベルボーイの方が言っていたのはこれか、と納得出来るほど大きな弧状のガラス窓からは湾の夜景が一望できる。


「綺麗だな」


紬はそう言うと私の背後に回り、優しく体を包み込んだ。


「誕生日おめでとう、楓」


甘い声と夜景に挟まれて、急にドキドキしてきた。

紬の体が背中から離れて、ゆっくりと体の向きを変えられれば、視線が絡み合う。


「目、閉じて」


言われるがまま、目を閉じる。


< 146 / 151 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop