極甘求婚~クールな社長に愛されすぎて~
雨雲は見当たらないけど、どこをどう見たら雨が降るというのだろう?
天気予報も雨の予報はしていなかったし。


「社長は天気に詳しいんですか?」
「山岳部だったから多少の知識はある」


それを聞いて山の頂上から下界を見下ろす紬の姿が思い浮かんだ。


「社長は昔から高いところが好きなんですね」
「そういうわけではないが…そういえばきみはなぜ高いところが苦手なんだ?」
「あ…えっと、小さい頃、高いところから落ちて…というより落とされて怪我をしたからです」


小学生の頃、橋から川に飛び込む遊びをしていた男子に『危ないからやめなよ』と注意したら、その子が逆上して私の背を押し、川に落とされた。

結果的に足に小さな怪我を負っただけだったけど、予想以上に深い川の中で溺れてしまい、すごく怖い想いをした。
だから今でも川は怖いし、泳ぐこともできない。


「災難だったな」
「そうですね。でも正義感は危険と隣り合わせなんだって早くに気付けて良かったと思います」


正義感を振りかざす以上、遅かれ早かれなんらかの制裁をくらっていただろうから。

でもそんな話をしていたおかげで昔を思い出し、思い出に耽っているうちにゴルフ場に着いた。
< 31 / 151 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop