極甘求婚~クールな社長に愛されすぎて~
そのときの射抜くような真っ直ぐな視線に褒められたことが重なり、鼓動が早まりそうになる。

でも「次、楓ちゃんの番だよー」と桧山さんに呼ばれたことで紬の視線から逃れることが出来た。


「お互い頑張ろね」


明るく送り出してくれた山崎社長に会釈し、慌ただしくティーグラウンドへと足を運び、ドライバーを手に順番を待つ。


「お手並み拝見だな」


側にやってきて上から目線に言う紬の方をチラッと見る。


「なんだ」
「いえ。別に」


そう、別に褒められたからって意識することなんてないんだ。

紬の横を通り過ぎるときに「負けませんから」と不敵に笑って見せ、ティーショットを放つ。



「よーし!今日も絶好調!」


カップにストンと吸い込まれるようにして入って行ったゴルフボールを取り、ガッツポーズを決める。

そして一緒にラウンドしている桧山さんと桧山さんのお客様である東綾乃さんとハイタッチを交わし、最後に紬に向けて手を広げる。

でも開始から2時間が経過しても一度も手を合わせてくれない。


「ウソだろ」


このセリフばかりを口にする。


「もう、始まってからずっと『ウソ』ばかりじゃないですか。私、事前に言いましたよね?社長より上手いです、って」


もちろん勝負を言い出したくらいだから紬も上手い。
でも私はそれ以上なのだ。
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