リト・ノート
「赤組副将、バレー部小林先輩。去年より10センチ伸びた身長を生かして頑張っています」
「白組大将は、スタミナと大声が持ち味の大橋先輩です。すごい速攻で早くも2人の帽子を奪いました」
3年生の騎馬戦では、羽鳥は後輩らしく礼儀正しく実況していた。
先輩たちの情報を盛り込んで応援し盛り上げた後、最終種目となる組対抗リレーにももちろん出て来る。
走る前から「羽鳥―!ぶっちぎれー!」とクラスから声が飛ぶ。かなり期待されているようだった。
そして4チーム中3番手で走り出した羽鳥は、本当に速かった。記憶にある通りの飛ぶようなきれいな走りだ。
あっと言う間に1人追い抜き、先頭ランナーに近づいて行く。
羽鳥行けー、きゃー!と男女入り乱れた頭の痛くなりそうな声援が飛ぶ。美雨も「羽鳥ー!」といつにない大声を精いっぱい出した。
最後のコーナーを回ってから1位をギリギリで追い越し、歓声の中バトンを渡す。受けた3年生がそのまま順位をキープしてつないでいき、1位でゴールテープを切った。
アンカーの3年生はもちろんかっこよかったが、リレー1位の立役者は羽鳥だと誰もが感じるレースだった。
ゴール付近でも、クラス席に戻って来ても、男子にも女子にも叩かれ揉みくちゃにされて笑っている。美雨が近づけるような雰囲気はどこにもなかった。