リト・ノート
競技が終わると、戻って来て体育委員たちとハイタッチをしていた。そんな羽鳥の姿をなんとなく眺めていたら、何かを探すように目線が動き始めた。
どうしたのかなと思ったら、美雨を見てその動きが止まり自慢気に笑った。照れと達成感が混ざったような男子特有の笑い方だった。
「やったねー、健吾! 笑えたよ」
美雨の隣で、沙織が大きく声をかける。
「おう」と羽鳥も応え、男子たちとそのままじゃれ合い始めた。
「やっぱり羽鳥も沙織狙いかぁ」
「ああやって笑えるんだねえ、あいつも」
由香と真尋が背後で噂をしている。沙織にも聞こえているはずだが、何も気づかないように「今日暑いよねえ、日焼け止めちゃんとすればよかった」と関係ないことを隣の美雨に言う。
自分を見たんだと思ったけど勘違いか、と思い直した。