リト・ノート

競技が終わると、戻って来て体育委員たちとハイタッチをしていた。そんな羽鳥の姿をなんとなく眺めていたら、何かを探すように目線が動き始めた。

どうしたのかなと思ったら、美雨を見てその動きが止まり自慢気に笑った。照れと達成感が混ざったような男子特有の笑い方だった。

「やったねー、健吾! 笑えたよ」

美雨の隣で、沙織が大きく声をかける。

「おう」と羽鳥も応え、男子たちとそのままじゃれ合い始めた。


「やっぱり羽鳥も沙織狙いかぁ」

「ああやって笑えるんだねえ、あいつも」

由香と真尋が背後で噂をしている。沙織にも聞こえているはずだが、何も気づかないように「今日暑いよねえ、日焼け止めちゃんとすればよかった」と関係ないことを隣の美雨に言う。

自分を見たんだと思ったけど勘違いか、と思い直した。

< 43 / 141 >

この作品をシェア

pagetop