ワケあって本日より、住み込みで花嫁修業することになりました。

仕事を切り上げ、各々立ち上がりオフィスを後にしていく先輩たち。

昨日までだったら私もすぐに席を立っていたけれど、今日は立ち上がることなく、パソコンを閉じバッグの中からお弁当を取り出した。

十分も経てば、オフィスには私と部長のふたりっきりになる。

静かな室内でお弁当箱を開け食べ進めていると、感じる視線。そっと顔を上げると、新聞を読んでいた部長と目が合った。

けれどすぐに視線を逸らされた途端、思わず声を上げた。

「あっ……あの！　部長、すみませんでした！」

オフィス中に響く自分の声。思った以上に大きな声が出ていたことに自分で驚く。

けれど私以上に驚いているのは部長で、私を凝視したまま目をパチクリさせている。

ここで押し黙ってしまったら私、もう二度と部長に自分の気持ちを伝えられない。自分を叱咤し彼に伝えた。


「私っ……小さい頃、友達に仲間外れにされてから、人と関わるのが怖くてうまくできなくて……。だから部長とお話できるようになって、嬉しかったし楽しかったんです！　でも私と話したせいで、部長のこと悪く言われているのを聞いてしまって……」