ワケあって本日より、住み込みで花嫁修業することになりました。

「桐ケ谷さんのこと、なにも知らないのに悪く言うのはやめていただけませんか？」

聞こえてきたのは、先輩たちに啖呵を切る綾瀬さんの声。

え……綾瀬さん？　聞こえてきた意外な声の人物に耳を疑う。

驚いているのは私だけではないようで、先輩たちも誰ひとり口を開かない中、綾瀬さんは声を張り上げた。

「桐ケ谷さんは誰よりも努力家で、仕事に一生懸命な子です。素気なくなんてありません！　先輩たちみたいに悪く言う方がいるから、自分を出せないだけです!!」

綾瀬さん……。理解してくれていたんだ、私のこと。

だからいつも声を掛けてくれていたのかな？　それなのに私……っ！

彼女の優しさに涙が零れ落ちる。

これまでの臆病な自分が憎い。どうしてもっと早く勇気を出さなかったんだろう。私……今までどれだけ損して生きてきたんだろう。

もしかしたら私のこと、理解してくれる友達と出会えていたかもしれないのに。


「いい加減、新入社員が配属されるたびに悪く言うのはやめていただけませんか？　先輩たちのせいで、何人辞めたか……！　先輩たちがしっかり私たち後輩を育ててください」