ワケあって本日より、住み込みで花嫁修業することになりました。
謙信くんを利用するみたいでこんなこと言いたくないけれど、先輩たちのあまりの態度に言わずにはいられない。

案の定、謙信くんの名前を出すと先輩たちの顔色が一変。急に焦り出した。

「なに言って……」


「謙信くんとは、昔から家族ぐるみの付き合いなんです。よく今も会っていますし、仕事はどうだって気にかけてくれています。……だからそこで言わせてもらいますね。今日のこと。別にいいんですよね？　先輩たちが好き勝手色々なことを言うように、私がどこで誰になにを話しても」

強気で言うと先輩たちは互いに顔を見合わせた。

「バカみたい、ムキになっちゃって。もう誰の悪口も言わないし」

「そんな子供みたいな遊び、もうしないし」

「行こう」

口々に言うと慌てて化粧室から出ていく先輩たちに、取り残された私と綾瀬さんは目が合うと、どちらからともなく笑ってしまった。

「やだ、先輩たちってばわかりやすい。あんな負け犬の遠吠えみたいなこと言うなんて」

「はい、本当に」

張り詰めていた糸が切れたように、心から笑っている自分がいる。
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