ワケあって本日より、住み込みで花嫁修業することになりました。
ずっとこんな風に人と対峙するのが怖くて逃げていたのにな。

勇気を出して自分の言いたいことを言えることが、こんなにも清々しいとは知らなかった。

ひとしきり笑った後、綾瀬さんは私の目を見て微笑んだ。

「嬉しかった。初めて桐ケ谷さんの本音を聞くことができて」


「あ……それは私の方です！　……嬉しかったです、綾瀬さんに私の気持ち、理解してもらえていたことが。それなのに私……今まですみませんでした！」

大きく頭を下げた。

先輩たちに啖呵を切ってくれて、庇ってくれて。本当に嬉しかった。だからこそ勇気を出すことができたんだ。

初めて自分の気持ちをしっかりぶつけることができた。それは綾瀬さんのおかげだから。

「桐ケ谷さん、顔を上げて。……それに私、桐ケ谷さんに謝ってほしいなんて思っていないから」

顔を上げると、優しい眼差しを向ける彼女と視線がかち合う。

「私は桐ケ谷さんと仲良くしたいの。先輩後輩としても、友達としても。……いいかな？　こんな私でも」

「綾瀬さん……」

視界が涙で滲む。
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