ワケあって本日より、住み込みで花嫁修業することになりました。

「それは……私の方です。綾瀬さん、話を聞いてくれますか？　……こんな私と仲良くしてくれますか？」

震える声で尋ねると、彼女は大きく首を縦に振り言った。「もちろん！」と。


いつの間に化粧室の周りには騒ぎに気づいた社員たちに囲まれていて、私たちはそそくさと後にした。オフィスに戻る途中、綾瀬さんは言った。


「真面目で一生懸命で。でもどこか放っておけなかった。桐ケ谷さんのことを知れば知るほど、不器用で臆病な子なんだなっわかってきて。だからこそもっと話がしたいと思っていたの」って。

それを聞いて私はまた嬉しくて泣きそうになった。同時に私のこと、知ってほしいと願った。


私も綾瀬さんのことをもっと知りたい。色々な話がしたい。仕事でもプライベートでも仲良くしてほしいと思ったから。

知らなかった。少しの勇気を出せばこんなにも世界が広がることに。それを教えてくれたのは彼だ。