ワケあって本日より、住み込みで花嫁修業することになりました。
もしかしたら将来、ふたりは私の義理の両親になるかもしれない。……そう思うと緊張する。

リビングで立ち尽くしていると、それに気づいた謙信くんはそっと私の隣に立つと、探るような目で私の顔を覗き込んできた。

「もしかしてすみれ、緊張している？」

もちろん緊張している。だから素直に頷いたものの、なぜか彼は口元に手を当て「フッ」と笑みを零した。

「なにを今さら。今までにも何度も会ってるじゃん」

「そっ、それはそうだけど……っ！」

笑われたのが癪で唇を尖らせてしまう。

「でも今までとは違うでしょ？　……明日会うときは謙信くんの婚約者として会うわけだし」

事実を言ったまでなのに、なぜか言った後で急に恥ずかしくなる。

改めて〝謙信くんの婚約者〟って言葉にすると、照れ臭い。

彼の顔をまともに見られず、視線を逸らすとすぐに力いっぱい抱きしめられた。

「きゃっ!?」

驚き声を上げる私の身体を、謙信くんはさらにきつく抱きしめてくる。

「け、謙信くん……？」

身をよじりながら名前を呼ぶと、彼は深く息を吐いた。
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