ワケあって本日より、住み込みで花嫁修業することになりました。
「ちょっとさっきのヤバかった」

え……ヤバかった?

顔だけ上げて彼を見上げると、額に落とされたキスに目を見開いてしまう。

チュッとリップ音を立て離れていく唇。そのまま謙信くんは愛しそうに私を見つめてくる。

「すみれ、ちゃんと自覚してくれているんだね。……俺の婚約者だって」

嬉しそうに目を細める彼にかぁっと顔が熱くなる。

そんな私を見て謙信くんは背中を撫でてくれた。


「大丈夫、なにも心配することないよ。父さんも母さんも、昔からすみれのことお気に入りだったし。それは今も変わらない。むしろすみれが嫁にきてくれたら喜ぶよ。……だから不安に思うことなんてないし、緊張することない」

彼の大きな手が背中を行き来し、かけられる声があまりにも優しくて心地よい。

そして自然と安心できてしまう。

「……うん、ありがとう」

今になって酔いが回ってきたのかな。立っているのが辛くて彼に体重を預けた。

「どういたしまして。……もしかしてすみれ、眠いの?」

「そう、みたい」

彼の腕の中は安心できて、心地よくて睡魔に襲われる。でも――。
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