ワケあって本日より、住み込みで花嫁修業することになりました。
そもそも彼に気持ちがないのに、そういう行為自体できる?

答えの出ない問題にまたひとり、グルグルと考えてしまい、慌てて首を左右に振った。

今私が一番考えなくちゃいけないことは、明日のこと!

十一時に行くってことは十時過ぎには家を出るだろうし、早く寝て寝坊しないようにしないと。

そう自分に言い聞かせ、お風呂に入りすぐにベッドに潜り込んだ。



「ねぇ、謙信くん。なにか買っていかなくて、本当にいいの?」

次の日。謙信くんの実家へ向かう車内で心配になり聞くものの、彼は「大丈夫」と言う。


朝起きて準備をしているうちに、伺うのに手土産をなにも用意していないことに気づき、謙信くんに少し早めに出てどこかで買っていきたいと言うと、謙信くんは「そんなのいらないよ」と言うのだ。

そのまま押し切られ、なにも持たずに実家へ向かっているけれど、不安になり再び尋ねてしまった。

だって印象悪くない? 謙信くんの話だと、昼食をご馳走してくれるのに手ぶらでいくなんて。

納得できずにいると、彼は付け足した。
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