ワケあって本日より、住み込みで花嫁修業することになりました。
私と謙信くんを交互に見ると満面の笑みになる。

「いらっしゃい！　どうぞ、入って入って」

「こ、こんにちは！　ご無沙汰しております」

大きく頭を下げた私の背中に謙信くんの大きな手が触れた。

「久しぶり母さん」

彼に促され共に初めて家に入ると、玄関から続く廊下は大理石で輝いていて、目を見張ってしまう。

あまりの明るさに上を見れば、天井は吹き抜けになっていて、天窓からは太陽の日差しが差し込んでいる。

ホッとできる温かさに包まれながら、案内されリビングへ向かう途中、おばさまは声を弾ませ言った。

「やっと謙信がすみれちゃんを連れてきて嬉しいわ。お父さんもすみれちゃんに会えるのを、心待ちにしていたのよ」

「……すみません」

そう言われると、つい謝ってしまう。するとおばさまはクスクスと笑った。

謙信くんと共に広い庭が見渡せるリビングへ入ると、おじさまはソファに腰掛け、新聞を読んでいた。

けれど私たちが入ってくると新聞をテーブルに置き立ち上がり、にこやかな笑顔を向けた。
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