ワケあって本日より、住み込みで花嫁修業することになりました。

「やぁ、すみれちゃんいらっしゃい。……謙信も久しぶりだな」

「こんにちは、お邪魔します」

「父さんも久しぶり」

挨拶を交わしながら見てしまうのはおじさま。

謙信くんは誰が見ても美形でイケメンなのに対して、おじさまはたれ目でちょっぴりふくやかな体型。物腰がやわらかく優しそうな印象を抱く。

おばさまは和服が似合う美人な人。……謙信くんは母親似なのかな？

そんなことを考えていると、キッチンからは美味しそうな匂いが漂ってきた。


「すみれちゃんが来るから、今日は張り切っちゃったわ。待っててね、すぐ準備するわ」

「あ……手伝います！」

そう言うと謙信くんは私のバッグを持ってくれて、「いっておいで」と言うように小さく手を振る。

そんな彼に頷き、キッチンへ向かった。

けれど広くて使い勝手がよさそうなシステムキッチンに、視線を奪われる。

リビングが見渡せる対面式になっていて、まさに理想のキッチンだ。

「素敵……」

思わず声を漏らしてしまうと、おばさまはクスッと笑い「ありがとう」と言った。