ワケあって本日より、住み込みで花嫁修業することになりました。
「よかった。……あ、もちろん沙穂さんにしか話さないから!」

必死に言うすみれが可愛くて笑みが零れる。

「別にいいよ、誰に話したって。……あ、俺も秘書の池田さんにだけは話してもいいか?」

専務の職に就いてから、父さんは長年自分の秘書を務めてくれていた池田さんを、俺の秘書として付けてくれた。

五十歳になる池田さんはベテランで、正直助かっている。


それに昔から面識があるから仕事もしやすい。そんな彼には、すみれとの婚約のことを話した方がいいと思っていた。

父さんも同じ意見だったようで、今後正式に婚約発表するとなると、池田さんの力も借りないといけなくなる。

そのためにも早めに話しておいた方がいいと昨日言われていた。


「もちろんだよ。ごめんね、内緒にしたいなんてワガママ言って」

「なにを急に。そんな可愛いワガママならいつでも大歓迎だよ」

すみれはワガママだって言うけれど、そんな風に俺は思っていないから。

恥ずかしがり屋で注目されるのが苦手な彼女だからこそ、内緒にしたいと願ったとわかっているから。
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