ワケあって本日より、住み込みで花嫁修業することになりました。
そんな意味を込めて言っただけなのに、すみれは目を丸くさせみるみる頬を赤く染めていく。

「……もう、またそんなこと言って」

そしてジロリと睨み恨めしそうに言った彼女が、俺はやっぱり可愛くてまた笑ってしまった。

やはりすみれといっしょにいると心地よい。

それは昔からずっと変わっていない。だからこそ、彼女と結婚したいと思ったんだ。



「すみれ、準備できたか?」

玄関先ですみれのことを待っていると、パタパタと足音を響かせ駆け寄ってきた。

「うん、ごめんお待たせ」

慌ててパンプスを履き、少しだけ乱れた髪を手で整えると、なぜかなにか言いたそうな顔を見せた。

「どうかした?」

今度はなんだろうか。尋ねるとかすみは手にしていたランチバッグを俺に差し出した。

「あの、これ……! いつも急な外出があるって言っていたから、迷惑だと思って作らなかったんだけど……」

「え……これは?」

聞くとすみれはすぐに答えた。
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