ワケあって本日より、住み込みで花嫁修業することになりました。
池田さんには父さんの方から、昨夜のうちに俺がすみれと婚約中だと、報告済みだったようだ。

朝出勤するとすぐに言われた。「ご婚約、おめでとうございます」と。

そして仕事の早い池田さんは、どのタイミングで婚約を公表するのがベストか、また挙式の日取りも何日か候補をあげてくれた。

これでも父さんの跡を継ぐ身。自分の結婚が一般的な結婚とは違うことくらい自負している。

だからこそすみれといっしょに暮らして、距離を縮めたかった。

弁当箱の蓋を開けると、色とりどりのおかずが詰め込まれていて、見た目からも美味しそう。

じいさんに仕込まれてすみれは料理上手だけれど、弁当も美味そうだ。

ついまじまじと弁当を見ていると、いつの間にかお茶を淹れた池田さんも、仲を覗き込んでいた。

「おや、これは……とても美味しそうで食べるのが、勿体ないくらいですね」

「あ、あぁ」

「栄養バランスもしっかり考えられているおかずですね。さすがは桐ケ谷家のお孫様です」
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