ワケあって本日より、住み込みで花嫁修業することになりました。
そっとお茶をデスクに置くと、池田さんは手にしていたランチバッグを掲げた。

「私も本日はこちらで昼食をいただいてもよろしいでしょうか? 今後のことを少しお話したいので」

「どうぞ」

「ではお言葉に甘えて」

そう言うと池田さんは応接ソファに腰を下ろし、テーブルに弁当を広げた。

そういえば池田さんは、いつも奥さんの手作り弁当を持参しているよな。


そんなことを考えながら箸を進めると、やはりどれも美味しくて、こんな弁当を毎日作られたら外食できなくなりそうだ。

「どうですか? お弁当のお味は。いいものでしょう? もう外食したくなくなるんではありませんか?」

「ゴホッ!」

今さっき思っていたことを言い出した池田さんに驚き、喉に詰まりそうになり、慌ててお茶で喉を潤おす。

「おや、どうやら図星だったようですね。失礼いたしました」

「別に図星ではないですから。たまたま喉に詰まっただけです」

咳払いをし強がるものの、どうやら彼には俺の心などお見通しなようだ。
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