ワケあって本日より、住み込みで花嫁修業することになりました。
「しかし感慨深いものですね。社長から専務の破天荒ぶりを聞かされており、どんなお方が入社してくるのだろうと思っておりましたら、社長に聞いたまんまのお方で、今まで何度女性関係で揉めに揉めたか……」

真実とはいえ、その話をされると耳が痛くなる。

「驚きましたよ、専務の秘書に就いた初日に別れた女性が会社に乗り込んできた際は」

そういえばそんなこともあった。昔の俺は、恋愛などまったく興味がなかった。


けれど誰かと付き合えば、好きって気持ちがわかる。そう思い告白されれば付き合ったり、その場限りの関係もあった。

ちょうど入社したばかりだった頃、社長の息子ってだけで変に気遣われ、時には心ないことを言われたりしていた。


だから余計にむしゃくしゃしていて、憂さ晴らしするように付き合った女性も何人かいて。……彼女たちとトラブルになったこともしばしば。

今思うと消し去りたい過去だ。バカなことをしていたと思う。

「すみませんでした、いろいろとご迷惑をかけてしまい」

謝罪の言葉を口にすると、池田さんは首を横に振った。
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